VCCIだより
VCCIだより71号掲載
インターネットで探るEMC 第10回
めっきと触媒
常深 信彦
奈良の仏像といってまず思い出すのは華厳宗東大寺の大仏であろう。高さ16m、幅12m、重さ112.5トンの巨大な毘盧遮那如来像である。743年10月(天平15年)、平和国家を願い聖武天皇より大仏造顕の詔が発せられ、752年(天平勝宝4年)に孝謙天皇が臨席させて開眼供養がとりおこなわれたというから既に1250歳をこえている。爾来、何度かの戦火や嵐を経験してきているがいまだ腐食現象が見られないというから当時の技術水準の高さが伺われる。完成までには大仏や966個の螺髪(らほつ)などの鋳造と組み立てに5年、表面の仕上げとめっきに6年、計11年の歳月を要している。水銀に金をとかした金アマルガムを表面に塗りつけ、内側から加熱をする焼き付け金めっきという工法がとられている。加熱時には水銀が蒸発し、水銀中毒が発生し、対策として既に毒ガスマスクが使われていたという。

奈良の大仏
めっきはメッキと片仮名で表記される場合もあるので外来語と思われ勝ちであるが日本語である。漢字では、塗金、滅金、鉱金、鍍金と変遷してきている。めっきん(滅金)から「ん」が取れて、めっきとよばれるようになったといわれている。めっきは、金属表面以外にも進出しており、プラスチックの携帯電話のケースや操作ボタンに電磁波シールドを目的に無電解メッキが施されている。また、LSIチップを複数内蔵するMCMケースのリード配線やLSI内部の配線にも銅メッキが使われている。
つい飲みすぎて騒ぎすぎたりして地がでてしまうと「めっきがはがれた」などと表現されることがあり、めっきは剥がれ落ちやすいものという印象が以前はあったようだ。そこで表面のめっきと下地との結合が密になるように下地面を滑らかに手入れした後、触媒となる金属をめっきして下準備しておく。めっきもお化粧も地肌のお手入れが大事なのは共通している。
・芹田一夫氏の電気めっき講座は、
http://www.nc-net.or.jp/kouza/mekki/

お肌の構造
化学元素記号の考案者として知られているスウェーデンのベルツェリウス(Berzelius)は、1835年に化学反応を促進する物質をキャタリスト(catalyst)と名づけた。この日本語訳が触媒である。ガソリンエンジンやディーゼルエンジンを積んだ自動車では、排気ガスに含まれるCOX、NOX、SOXや粒子状物質(PM)を低減するために酸化触媒や還元触媒を組み合わせた排出ガス浄化装置を組み込み、規制値を満たしたガスを排出している。触媒は、自分自身は変化せず、反応を制御して働き続け、公害対策に貢献してくれている。
・触媒反応の種類については、
http://www.kek.jp/newskek/2003/sepoct/RhCO.html
・触媒学会のホームページは、
http://www.shokubai.org/
工事現場を取り囲むパネルに光触媒の酸化チタン塗装を使ったものが増えている。これは油汚れ、煤等の汚れが分解して雨などで洗い流されてしまうので清掃の手間が省けるからである。また、光エネルギーが光触媒により活性酸素をつくりだし、酸化還元反応をおこすので悪臭を分解してしまう。そこで家庭や病院でエアコンや空気清浄機に組み込まれてアンモニアやアルデヒドなどの生活臭の脱臭に活躍している。窒素酸化物や硫黄酸化物を分解してしまうので建築材や道路材に使われて交通渋滞の激しい場所の大気浄化に一役買っているところもある。塩素系の有機物を分解する作用を利用して工場排水の水質浄化装置に使われているものもある。このように多方面で八面六臂の活躍をしている二酸化チタンの光触媒性は、東京大学大学院の藤嶋昭教授によって1967年に発見された。当初は水素を量産することを目的にして研究されていたが、化学物質を分解する能力や高い親水性による撥水作用等のさまざまな有効性が発見され、その応用研究が進められて多彩な製品に展開されてきた。
・光触媒の基本原理については、
http://www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/hyoujun_gijutsu/hikari_shokubai/01_mokuji.htm
EMCの世界でおなじみのカーボンやフェライトを使った電波吸収体(電波の反射を防止する)では電波のエネルギーを熱に変換している。最近では騒音の吸音も兼ねた屋外で使用される電波吸収体とか高周波用ICチップを覆うフェライトめっきなど新しい吸収体の開発も進められている。電波エネルギーを活用する電波吸収体においても光触媒の様にもっと多方面で活躍するユニークな製品の出現が期待されている。
・ETCやDSRC用の電波吸収体については、
http://www.mitsubishi-cable.co.jp/jihou/pdf/99/12.pdf
・東工大・阿部正紀教授のフェライトめっき法については、
http://www.pe.titech.ac.jp/AbeLab/index-j.html
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常深 信彦 (つねふか のぶひこ)
1943年 東京都生まれ 1968年 大阪大学基礎工学部卒業 1984年まで 日立製作所多賀工場でIT機器の開発に従事 1991年より 日立工業専門学院で電磁環境関連の教育に従事 1999年より 日立・技術研修所プランニングマネージャ |





